アボルブとそのジェネリック デュタステリドについて

 前立腺肥大症の治療薬のひとつ、アボルブのジェネリック医薬品(デュタステリド)が使えるようになりました。アボルブは、前立腺肥大症で大きくなった前立腺を小さくすることができるという薬です。「そんな薬があるのなら全ての前立腺肥大症に使えばいいのでは?」と思われるかもしれません。しかし、現実にはいくつかの問題点があり、私は前立腺が非常に大きい人や、他の薬(主にはアルファ遮断薬に分類される薬)で不十分だった人に使用しています。効果が出るまでにある程度の時間がかかることと、時に肝障害が出ることに関しては注意が必要ですし、前立腺癌の検査に用いられるPSAという血液検査の数値を低くしてしまうことにも注意が必要です。ですが、数多い前立腺肥大症の症例の中にはこの薬が有効であるケースがあります。私も多くのケースでこの薬を使ってきました。

また、実はこの薬には前立腺肥大症のほかもう一つの有効性が認められています。健康保険は使えませんが同じ成分の薬、および類似成分の薬によるAGA(男性脱毛症)に対する自費治療が行われています。

 ただし、当院ではAGAに対する処方をしていません。なぜAGAに対してアボルブを処方していないか? 私はある事情から(笑)この薬の脱毛症に対する効果に興味を持っており、前立腺肥大症に対してアボルブの処方を継続していた数百人のおつむを観察していました。私が観察したところ、残念ながら処方後に髪がふさふさとしてくるひとはもちろん、「増えてきたかな」という人、あるいは「生えてきたんです」という副作用(?)の訴えも見られませんでした。

院長写真(2020年6月)
参考写真: 院長近影

 私よりかなり若い内科の先生から「脱毛が止まった」という話を伺ったことはあり、もしかすると非常に早い段階で服用すると効果があるのかも知れません。ただ自分で責任をもって処方するにはちょっと証拠が不十分と思います。もしかすると私が非常に信頼できる先生から「治療効果、あるよ!」と言われれば、方針を変更した上で、当院でも処方を始めるかもしれませんが。

 さて、この前立腺肥大症に用いられるアボルブですが、非常に高価で、1カプセル約210円です。1か月の薬価は6000円を超えます。これがジェネリック医薬品では約60円で処方ができます。自己負担のない人、自己負担の少ない人にも限られた医療費を有効に使うためにも勧めさせていただきたいと思っています。よろしくお願いします。