最近、夜間多尿・頻尿の薬としてミニリンメルトという、もともと尿崩症の薬がでました。この薬は脳下垂体からでる抗利尿ホルモンです。もともと人は昼間起きている間の尿量は多く、夜間に作られる尿量は少なくなっています。このバランスが崩れ(このホルモンの分泌量が減り)夜間の尿量が多くなった患者さんの尿量をコントロールする、という薬です。
もともと尿の量というのは体の水分量と塩分量をもとに微妙な制御をされています。塩分、水分が過剰になれば尿からそれを排泄し、逆に水分不足になれば尿量を制御しますが、睡眠中はそれとは別に尿を作る量が減るわけです。健常な若い人は6~8時間の睡眠時間いかずにすみます。
年をとると睡眠中の尿回数が増える傾向にありますが、これにはいろいろな要素があり、眠りの深さ、腎臓の機能(昼間だけでは十分な血液浄化・老廃物の排泄ができない)、水分の摂取量、前立腺肥大による刺激、膀胱の容積などさまざまな原因がありますが、特に次のような場合にミニリンメルトの適応があるようです。
1.夜間の尿回数・尿量が多い(日誌による確認が必要)
2.水分摂取量が多くない (ビール、コーヒー、ペットボトル飲料などが多くない)
3.血中ナトリウム濃度が低くない。中等度以上の腎機能が保たれている(血液検査が必要)
4.ステロイド、利尿剤などを治療に使っていない (低ナトリウムを来しやすいため)
5.心不全など(たくさんの使えない病気があります)がない
こうした多くの条件をクリアしたうえで、2週間後の血液検査を施行し、その結果を確認したうえで2回目以降の処方を考えるということになるようです。非常に警告ばかりが強調され、使いにくい薬になっているようです。夜間に尿の量や回数が多いからと安易に使える薬ではありません。
中にはこうした薬が必要な方もいらっしゃるとは思いますが、まれです。まずなすべきことは夜間の排尿日誌をつけて何時に何mlの尿が出たかを把握すること、飲水習慣を確認し、ビール・酎ハイの水割り(水の量のほうが問題)・コーヒー・紅茶・緑茶などの水分やカフェインの摂取、下肢のむくみや寝室の温度、睡眠時間、睡眠の深さなどを確認して的確な指導をしていくことだと思います。
このミニリンメルトという薬は体がじゃまだからだそうとしている水分を無理に留め置く薬です。尿崩症や成人夜尿症などがなければ、夜間多尿・頻尿に使うのは最後の手段と言っていいのではと思います。