膀胱炎はくせになる?

 患者さんから時々聞かれることに「膀胱炎は一度なったらくせになりますか?」という質問があります。

 結論から言うと、くせになる、つまり膀胱炎にかかったこと自体が原因となって、次に膀胱炎にかかりやすくなるということはありません。しかし、背後に共通の原因があって、何度も膀胱炎になってしまう人はいます。

 まず、基礎疾患として膀胱内に異常(膀胱結石、膀胱腫瘍など)がある場合、膀胱の働きや排尿状態が悪く(神経因性膀胱、前立腺肥大症、前立腺癌など)残尿が多量にある場合などにみられます。言い換えると、膀胱炎になった人に対しては、そういう異常が隠れていないかどうかを適切にチェックしていく必要があると考えられます。

 症状の確認だけでなく、尿の詳しい検査をして、必要だと思えば腹部超音波で膀胱・腎・(男性の場合では)前立腺などの状態を観察するのが望ましいと思われます。基礎疾患があるかたにはそちらの治療をすることにより、次から膀胱炎になりにくくできることもありますし、より深刻に命にかかわる病気を発見できたり、排尿障害による不快感を改善することができることもあります

 また、生活習慣のせいで、膀胱炎になりやすくなっているというケースは多々あります。膀胱炎はトイレに行く回数が非常に少ない人、仕事中トイレに行けないので水分を制限する人にはたびたび起こります。女性の尿道は短く(約4㎝)、出口の雑菌が膀胱に向かって登ってくるのを定期的に洗い流すことが予防にもつながります。

 年齢ごとに膀胱炎の原因になりやすい生活習慣もあります。幼児期に膀胱炎を繰り返す女児ではおしりの拭き方に問題がある場合があります。前から手を入れて後ろから前に拭くと膀胱炎になりやすくなります。若い女性が今までになかった膀胱炎を繰り返す場合、性交渉が問題であることもあります(清潔にあつかってもらうことが有効です)。老人においては汚れたおむつ(の交換頻度)が問題であることもあります。

 せっかく受診していただいた患者さんには、できるだけ次にまた膀胱炎になりにくいように生活上のアドバイスもさせていただくように心がけています。