前立腺炎は悩んでいる人の多い病気ですが、熱心に取り組んでいる泌尿器科医の数はむしろ少ないのではないかと思います。特に、病院で主に「泌尿器外科医」として活躍している医師たちの間では、できれば避けて通りたいと思っている方も多いのではないでしょうか。
症状も多彩で、漠然とした不快感、残尿感、頻尿、排尿困難、さすような疼痛、鈍痛など、さまざまです。年齢層もあらゆる世代にみられ、若いのに前立腺の病気と言われたことにショックを受ける人もいます。
職業としては事務職、コンピュータを相手にした座り仕事、バスやタクシーなどの運転手など座りっぱなしの職業に多いように思われますし、立ち仕事でも同じ場所でずっと立っているなどの仕事では多くみられるようです。
前にも書きましたが、こころの病気としてとらえている医師、感染症としてとらえている医師さまざまです。未だ病態、治療法につき定説と言えるものがないせいでしょうか。研究会やガイドラインというのが確立していないせいもあるかも知れません。(もしすでにあったら申し訳ありません、不勉強で)
私は限られた状況の中、使用可能な薬を手探りで使用し、訴えを聞きながら薬を替えたり、追加したりしています。前立腺炎は結構厄介者扱いされて流れてくる方も多く、おそらく当院はかなり多い方になるのではないかと思います。
私自身が前立腺炎であれば自分の症状がよくなるかどうか、各種の薬を試してみることもできるのですが、幸いなことに私はまったく前立腺炎の気がありません。したがって患者さんの訴えに耳を澄ますほかはないのです。
あとは、ほかの「前立腺炎の治療に熱心な」泌尿器科の医師からの情報収集でしょうか。SNSの発達により学会の時以外でも他の医師とコミュニケーションをとることが可能になっていますが、残念ながら「前立腺炎の治療に熱心な」泌尿器科医というのは尿路癌の治療に熱心な泌尿器科医や神経因性膀胱の治療に熱心な泌尿器科医ほどには多くはありません。(身の回りに探し切れていないだけかも知れませんが)
さてもう一つの情報収集の方法として前立腺炎の患者さんが立ち上げているブログがあります。こういったブログ記事を参考にするにあたっては、注意が必要です。すんなり薬が効いて良くなった人はブログは書きません。紹介されている「これは絶対」という治療法の中には、医師の目から見ると首をひねるものもあります。これは我々が大勢の患者さんから浅く(毎日に密着しているわけではありませんので)情報を集めているのに対し、ブロガーは自分という特殊な一例に対して限りなく深く観察しているのでそうなりがちなのだと思います。
しかし、私はこういったブログは、大変参考になると思っています。統計的に効果が認められた薬も生活習慣も、100人が100人改善するというものではありません。一方でブロガーが「自分の場合はこうでした」「こう思います」という訴えの中には、深くうなずくものもたくさんあります。
今後もアンテナを張りめぐらせて情報収集に努め治療に活かしていきたいと思います。