慢性前立腺炎について

 先日、消化管疾患の講演を聴きに行き21世紀は機能性疾患の時代だ、という講演を聴いてきました。過敏性大腸炎などで来院した患者にひととおりの検査をして、「検査では異常は見つかりませんでした」とか「気のせいでしょう」などといってはいけない、患者の訴えを良く聴いて信頼を得なければ効く薬も効かないという主旨のお話でした。

 泌尿器科における代表的な機能性疾患は慢性前立腺炎だと思います。当院でも受診される方の10%ぐらいは青年~壮年層の慢性前立腺炎です。尿がなんとなくでにくい、尿の回数が多い、残尿感がある、下腹部が不快であるなどの症状で来院されるのですが、この病気は微妙な症状の違いによって薬を使い分けることが大切なように思います。細かくはとても書ききれないのですが(きっと本が書けると思います)、抗生物質を使うケース、前立腺肥大症でつかう薬が有効なケース、植物エキスや漢方薬、抗不安薬などなど、さまざまです。

 難しい病気ではありますが、私の考えでは前立腺マッサージや内視鏡手術などではなく、良く訴えを伺った上で、こまめに薬を調節することで多くの方は良い結果が得られると思っています。薬をやめられない方や再発を繰り返す方も確かに多いのですが、飲む前の苦痛は改善している方がほとんどだと思います。(もしかしたら効いてない方に見切りをつけられて来ないからかも知れませんが)

 前立腺マッサージや手術を否定するわけではありませんが、なんども書いている「自分や家族でも受けたい医療」からいうと、とりあえず尿の検査とおしっこの勢いの検査、超音波検査で膀胱や前立腺の状態を見た後に、まずは薬での治療を試してみたいと思っています。

 医学は日進月歩ですので学会や学術雑誌、インターネットなどには注意を払って新しい情報にも肯定的には接していきたいとは思いますが。

 では直腸診はしないのか?と問われたら、必要と思う方には「病気を鑑別する上で、こういう気持ちの悪い検査もした方がいいですけどどうしましょう?」と尋ねることにしています。異論が多いことも承知していますが、多くの方には直腸診なしで治療をしていますし、前立腺マッサージの治療的意義は疑問視しています。