PSAが少し高いと言われたら

 PSAとは、前立腺特異抗原というたんぱく質で、本来は血液中には微量にしかみられないものです。前立腺癌になると血液中のこのたんぱく質が増えることから、前立腺癌を見つけるためにこのたんぱく質を測る検査が行われています。ただこのPSAの上昇は前立腺癌だけでなく、前立腺肥大症や前立腺炎でもみられます。

 PSAが4ng/ml(ナノグラム)以下が正常となっていますが、それを境にキッパリと癌とそうでないものが分かれるわけではありません。4という数字は、前立腺癌の可能性が(ごく初期のものまで含めて)5%ぐらい(つまり20人にひとりぐらい)という数字で、これを超えたら「泌尿器科でもう少し追加の検査をして詳しく調べましょう」ということになります。

 具体的には、非常に怪しければ前立腺に針を数か所刺して癌細胞があるかどうかを調べる「生検」という検査を行います。もう少し疑わしさが少なければ、強い磁力のMRIでこの生検が必要かどうかを確認するようにしています。

 仮にもし癌だったとしても、検診でみつかるような初期の前立腺癌は必ずしも命とりになるわけではありません。75歳以上の方や心臓などに他の重い病気がある場合は、それほど積極的に見つけに行かなくてもよいかもしれません。この判断は、他の病気がどれくらい重いかと、PSAやそれに続くMRIでどれくらい疑わしいかによって変わってきます。とはいっても、この判断はかなり難しいので、PSAが高かった高齢の方も、自分で判断せずに主治医と泌尿器科医に相談していただきたいと思います。

 企業検診によっては、50歳前後の非常に若い方にもPSAの検査をされている場合があります。ごく若い方で万が一前立腺癌が見つかり手術により救命できれば非常に大きなことですし、意義がないとは申しませんが、若い人のPSA上昇はほとんどの場合前立腺の炎症によるものです。PSAの測定は若くても55歳以上で考えてはどうかと思います。(時に30代、40代の軽度PSA上昇の方が紹介されてきます)