夜間頻尿の治療薬について

夜間頻尿の治療薬にはさまざまなものがありますが、どれも決定的とはいえず、最初は1~2週間の処方で効果と副作用を確認しながら落ち着けば長期処方へ、その都度確認しながら薬を調節していくという形になります。

1.過活動膀胱の治療薬

 (1)抗コリン薬 膀胱の緊張をといてたくさん溜まるようにする、尿意があったときにトイレにたどり着くまでに我慢できるようにする薬です。この系統の薬は同種の薬効であっても強弱があり、薬の効果が強いものは副作用も強い傾向があります。副作用としては排尿困難、眼や口の渇き、便秘などがあるほか、緑内障の眼圧を上げることがあり、一部の緑内障の人には使えません。この薬に限らず、薬を選ぶときには薬効も副作用も軽い、少ないものから試していくのを原則としています。薬のmg数も少なめから試すようにしています。デトルシトール、ウリトス、ステーブラ、トビエース、ベシケアなどがあります。

 (2)β3刺激薬 比較的新しい治療薬で、抗コリン薬とは違った機序で膀胱を緩める作用があります。副作用としては(薬によってはですが)血圧の上昇、不整脈の悪化などがあり、併用薬に注意が必要です。ベタニス、ベオーバがあります。

 (3)抗利尿ホルモン 夜尿症には使われてきましたが、最近夜間多尿に対し認可された薬です。夜に作られる尿を減らす効果があります。もともと若いときは昼間にたくさんの尿を作り、夜には尿の生産をストップするようになっています。それが年をとってくると眠りが浅くなること、昼間のフル回転で尿の生産が間に合わないこと、下肢のむくみを尿に出すことなどにより夜に生産される尿がふえてくることなどにより、たくさんの尿が作られるようになります。尿を作るのをやめさせる薬であり、低ナトリウム血症などを引き起こす可能性もあるので血液検査などが必須であり、使用は寝ている間の尿量が異常に増加している場合、ということになります。ミニリンメルトという薬があります。

 (4)前立腺肥大症の治療薬 大雑把なくくり方をしましたが、前立腺肥大症による排尿困難は残尿の増加(膀胱の有効容積の減少)を来したり、膀胱刺激症状による頻尿を誘発したりします。肥大症の治療が夜間頻尿の治療に結びつくことはよくあります。

 (5)睡眠の改善 近年精神科などの専門でもないのに睡眠薬をやたら処方すべきでないとの指導があります。私も処方に関する講習を受けに行ってきましたが、薬効やリスクを聞くにつけ注意が必要で漫然と続けるべきではないとの思いを強くしています。一方睡眠障害による夜間頻尿は存在し、泌尿器科的要素と精神科的要素が混在する症例は存在し、その都度精神科との併診を強要するのはどうかと思われます。状況によっては軽めの薬を短期間使用し、よくなれば早めに切り上げ、中等症以上は心療内科や精神科の併診を勧めるということをこころがけています。