メタボリックシンドローム

特定健診と保健指導講習会(7月15日)

 土曜日が原則として半日仕事をしているわれわれとしては日曜日は貴重な休日なのですが、6月に2回の土日のすべてを費やして健康スポーツ医の講習を受けてきたのに続き、7月15日の日曜日に特定健診・保健指導に関する講習会を受けてきました。開業するまで健診制度に関し大変疎かった私ですが、開業してからは自らの健康問題も含め、よりよい健診に取り組むためがんばっています。

 さて、来年から健診制度が大きく変わるわけですが、一つ目の変更点は健診制度の主体が市町村や企業などから、保険者(健康保険のお金を働いている人々から集めて、給付をする団体)に変わることのようです。すなわち、予防医学に力を入れて病気のひとを減らせば、保険者から出て行くお金も減るのでメリットがあるでしょうということです。二つ目の変更点は今までは異常を見つけて知らせることまでで終わっていたのが、生活習慣病、特にメタボリックシンドロームを発見して高血圧、高脂血症、糖尿病などの病気にならないように「保健指導」をするところまで健診でやっていこうということのようです。

 果たしてこうした試みがうまくいくのかどうか、わからない部分もありますが、こうした枠組みを一生懸命つくっていらっしゃる、今回の講師も務めてくださった先生の熱意をひしひしと感じました。実際開業してから、尿路結石や尿糖などから生活習慣病がみつかり治療している方々も何人もいらっしゃるわけですが、こうした方々が知らない間に心臓や脳の血管が詰まったり、腎臓が悪くなったりするのを防ぐよう生活指導するのもわれわれの務めではあるわけです。

 泌尿器科が専門のお前にそんな指導ができるの?という声も聞こえてきそうですし、ひとの指導をする前にまずお前の健康管理をしろよ、という声も(これは具体的に)聞こえてきます。

 言い訳をしますと、尿と常に向き合っているわれわれはしばしば未治療、無症状の糖尿病に遭遇しますし、尿管結石からみつかる高尿酸血症も、高脂血症や糖尿病を伴うことが多くみられます。また糖尿病や高血圧は腎を悪くすることがあるのですが、その初期段階において蛋白尿がみられるのです。そうしたことからこうした生活習慣病に関しては泌尿器科医は結構診ているのです。

 またメタボの入り口にいる私に指導ができるか?という点に関しては、自制心が強くメタボに縁のない先生よりわかる部分も多いのではないかと思っています。一旦はメタボの入り口というより玄関先まで上がりこんで血圧の高値や肝機能異常、高コレステロール、食後高血糖などの世界をちょっとみてきて、そこから自転車と心拍計を用いて入り口まで戻ってきた私、おいしいものが大好きでともすればオーバーカロリーに陥り、一生懸命運動でつじつまを合わせている私のほうが理論派の先生よりも役に立つ部分もあるのではないか?そう思います。

 キーワードは楽しく運動することがひとつ、努力が数値化できるメカを持つことがひとつだと思います。万歩計はだれしもがすぐイメージするところなのでしょうが、日々の生活の消費カロリーをあげるには有効でも、運動能力や心肺機能の向上を測り、その向上を喜ぶには不十分です。ずっと私のコラムや日記を読んでいる方はしつこいやつだなと思うかもしれませんが、心拍計こそ楽しく(かつ安全に)運動するにはかかせないものと思います。これはジョギング、ウォーキング、水泳などいろいろなスポーツに使うことができますし、自転車に乗ってみようという方にはサイクルコンピュータ(速度、距離、平均速度などを表示できるもの)との併用がお勧めです。実際私は全く食事制限なしに(おそらく300~400Kcalずつオーバーカロリーの食事をしながら)体重、腹囲の減少、血圧、血液検査の改善を果たしています。(本当は食事制限しながらの方が楽なのだとは思いますが、口がいじきたないので。)

私がメタボになった時

 振り返って、30代の時から私は太めではありましたが、血液検査の異常や血圧の異常は全くなく、そういうことは自分には関係ないと思っていました。

 大きな転機はある事情から深夜にラーメンを食べに行くようにになったのが大きな原因だったと思います。考えてみれば夕食は普通に食べて、800 ~ 1000kcalはあろうかというラーメンを寝る直前に食べるなどというのは、今から考えればメタボをつくるための実験であったように思います。

 やせるときもそうですが、太るときもなかなか目に見えてはわからないもの。しかし気がつけば数kgの体重増と肝機能GPTの軽度上昇、正常範囲内での血糖の上昇などを認めました。血液検査の異常で言うとあまり世の中では言われていませんが、赤血球や白血球の数が比較的早期に多くなるように思います。血が濃いのは健康なのでは? と医者でありながら思っていたのはなかなか恥ずかしいことでした。

 また別に整理したいと思いますが、異常値がでるまえにメタボの兆候を察知することは可能と思われます。また特定健診では対象は40歳以上となりますが、20代のときから生活習慣を正し、30代の時から各種検査で早期発見~早期生活是正を図ることが(医療費の削減のためでなく)健康な生活への近道のようです。

メタボの兆候

 がんなどの悪性の病気ほどではなくても糖尿病や高血圧、高脂血症のような病気は早く見つけて早く対策をたてるほどよくなるのも早く、一生薬を飲み続けたり、合併症に悩まされる可能性を低くすることができます。国は医療費削減のために勧めている特定健診ですが、個々の健康のためにもメタボの兆候を早期発見し食生活や運動生活の軌道修正を考えるのは大切です。

 普通に考えて当たり前なのは、体重増とベルトまわり(腹囲)の増加です。30代の時にはなかなか検査データには現れないのですが、体重や腹囲が増えれば元に戻す努力が必要です。腹囲も85cmを下回っているからよしではなく、20代(せめて30代)の体重、腹囲に近づける努力が必要です。

 メタボの診断基準としては腹囲のほか、血圧や血液検査で判定するわけです。医者としてより自分の経験からですが、正常値にあっても正常値内での変動が結構重要で、少しずつ数値があがっているようならそのときから対策を講じても早すぎることはありません。特に最低血圧が80台になったり、空腹時の血糖が100を越えたりした場合も(診断基準を満たすわけではありませんが)対策始動してもいいのではと思います。そのほか、これは世の中の診断基準にはありませんが赤血球数や白血球数が多め、というのもメタボの前触れとして現れてくるように思います。こうしたデータも1年前、2年前に比べて増加しているようなら注意が必要です。

 最近では生活習慣病になりやすい体質、遺伝情報を検査することもできるようになっています。先日検査センターの方が見え検査内容につき説明して下さいました。体質を調べて注意を喚起することに意義があるとのことでしたが、私の見解からいえば、多額のお金をだしてこの検査をするよりは健診での血液検査やその他の機会の血液検査の結果をグラフ化して(正常値であっても)グラフの向かう先を予測していく方が現実的で有効な予測ができるのではと思います。

フライドポテトのカロリー

 先日勉強してきた特定健診・保健指導に関する講習会で勉強になったことのひとつにマクドナルドでは商品のカロリーをホームページ上で公開しており自由に見ることができるというのがありました。

 その中でフライドポテトのカロリーは想像以上に高いことを話されていました。私もそうですが、ハンバーガーふたつは食べすぎだろうが、ひとつでは足りない、フライドポテトのMかLを添えて食べようかなどという発想はよくあることではないかと思います。ところがハンバーガー251 kcal、チーズバーガー303 kcalに対してポテトのMは420 kcal、Lサイズに至ってはハンバーガー2個を越える529 kcalあるのです。

 揚げ物がカロリーが高いということを漠然とは知っていてもここまで高いと思っている人は少ないのではないでしょうか。

 先生もおっしゃっていましたが、食べたものの全カロリーを計算して適正化するというのは難しいと思います。

 ただ、よく食べるものやいつも食べているものと比較しやすいもののカロリーの概略を知っておき、これを余分に食べれば何カロリーの摂取、これをやめておけば何カロリーを節約(節約というのはおかしいかも知れませんが)、などと考えならがら食べ物をとり、可能な範囲で油ものや油で揚げたお菓子、ラーメンなどをとるのを控えていくのが正しいダイエットの一歩かと思います。

1ヶ月に1kgやせるためには

 この項は特定健診・保健指導の講習会で勉強してきたことの受売りです。

 1 kg の脂肪組織はカロリーに換算すると7000 kcalになり、これを1ヶ月でなくすためには摂取するカロリーをこれだけ減らすか、運動により通常の生活より消費するカロリーが7000 kcalに達するようにしなければなりません。一日あたりは233 kcalになります。

 これは自転車でいうと20分ぐらいまあまあの負荷でこいだ消費カロリーになります。これだけ運動するのはさほど難しいことではないのですが、のども乾けばおなかもすくし、なにより「今日はずいぶん運動したから、まあいいか」と食べたり飲んだりするのを差し引かないといけません。

 私の運動量は1ヶ月に 2 kgは減っていて不思議はない量ですが、1 kgはやせません。本当におそるべき食欲、おそるべき意地汚さと思います。

 私の推定ですが、毎日の平均の運動は500 kcalで体重維持の摂取カロリー+400 kcalは余分に食べていて100 kcal分ずつやせて行っている、おそらく1ヶ月300 ~ 400 gといったところと思っています。この仮説が正しければ、自転車に乗らねば2 kgずつ体重は増えてしまうということになるのでしょうか。運動しておいしく食べるというのも悪くはないのですが、もう200 ~ 400 kcalは控えた方がよさそうです。